1st stage.邂逅

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ね!と楓が振り返ると、目の前に深紅が広がる。視線をずらして少し上を見れば、薫と同じ黒がいた。 「おかえり、べにこ」 深紅は大量の薔薇で、黒は刹那が着ているシャツだった。 同じ黒でも刹那の場合、純粋な黒である。光さえも吸収してしまう、ブラックホールの様な黒。 上から下まで真っ黒な彼は、名前を刹那といい、薫とは違い、天然パーマの入った黒髪を首の付け根まで伸ばしている。 ずい、と差し出された薔薇を紅子は満面の笑みで受けとる。 「お前は相変わらずだね、刹那。よくあたしが帰ってくるのが解ったね」 「…ん。めだつ、から。すぐわかる」 刹那はこくんと頷いて紅子の隣に座る。楓は未だ紅子に抱きついたままだ。 「枯れない内に生けましょう」 薫の言葉に紅子は薔薇を彼に渡した。再び開けた視界に、今度は茶色が入る。 「お帰りなさいませ、マイマスター」 聞こえてきた二重の声。紅子の視線の先には同じ顔が二つあった。 「お前達も相変わらずだね。光(コウ)に影(ヨウ)」 くすくすと楽しそうに笑えば、二つの同じ顔は同じタイミングで頭を下げる。 「マスターもお変わりなく」 「お綺麗で」 同じ顔の二人は、交互に話すと、再び同じタイミングで頭を上げた。そして紅子達がいるカウンターの内側に入る。 それを見届けた紅子は、ゆっくりと馴染みの顔を見回した。 「さぁ坊や達、今日も華麗に踊りなさい」 夜の幕があける。
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