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だが甘いな。
この戦い、勝利したのは俺だ!
「くく・・・妹よ・・・」
「な、何よ。とうとう壊れた?」
「俺達の体はすでに"俺の教室前"に"到着"している・・・」
「・・・!!」
バッ、と俺から飛びのく妹。
そう、俺は自分の教室と妹の教室への道の分岐点まで逃げ切ったのである。
「ちっ・・・惜しかったわ・・・あともう少し捕まえるのが早ければ近くのトイレに連れ込めたのに・・・」
「え?え?嫌だ、なにそれ?なんか恐ろしい意味でもいかがわしい意味でもとれるんだけど・・・」
「両方」
「絶対嫌だ!てか女子トイレに連れ込む気だったのか!?俺の社会的地位が崩壊しちまうぞ!」
「男子トイレに入ってほしかったの?望むところね」
「そこ躊躇えよ!」
・・・・・・しばらくこんな下らない言い合いをしていたのだが、しかしながら、延々と馬鹿騒ぎしているわけにはいかないのである。始業時間が迫っている故に。
始業時間5分前なのに気づいた妹は、物凄く悔しそうに俺に背を向けた。
「仕方ないわ、今度連れ込むときは男子トイレに・・・」
「おいコラ、それじゃまるで俺が連れ込まれたことがあったかのような言い方だな?」
「違うの?」
「全然なかっただろそんなこと!何既成事実化をはかろうとしていやがるんだ!おかげでクラスの奴らがこっちを変な目で見てるじゃねーか!!」
「知らないもん、つーん」
口を尖らせながら、拗ねたように階段に向かう妹。
全く、仕方ない奴だ。
「はぁ・・・ま、しゃーねー。また後でな
夕陽」
ピタリと
妹・・・・・・夕陽の足が止まった。
「やっと・・・」
「あん?」
「今日になって初めて、名前呼んだね」
振り返った夕陽の顔は。
さっきまでの不機嫌なんてどこ吹く風な、いい笑顔だった。
「なんだ、こんなことで機嫌直してくれるならいくらでも名前呼んでやる」
「それ、約束だよ!!」
そう叫んで、夕陽は本当に嬉しそうに階段を駆け上がっていった。
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