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陸の上にヒトの国があるように、海の底にはサカナの国がある。
遥か遠い昔は、ヒトとサカナの仲は良く、互いに交流もあったというけれど、それもなんらかの理由で断ち切られてしまった。
現在、サカナが陸に上がることは海の王によって固く禁じられている。海の上に顔を出すことも許されない。
それは何故かとキーリが問えば、他のサカナ達は口を揃えて同じことを言う。ヒトは野蛮で恐ろしい生物だから近付いてはいけないのだ、と。
しかし、それを聞いてもキーリの憧れは常に陸にあった。こことは全く違う世界がどんなものか、興味を捨て去ることはできなかった。
だからキーリは思い切って陸を目指して――そうして彼に出会ったのだ。
「ジルさま」
小さな声で名前を口ずさむ。それだけで胸がドキドキする。こんなことは、今まで一度もなかった。
あの闇に浮かぶ銀色と同じ輝きをする髪を持つ彼は、ジークフェルト。ヒトの国の王子である。
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