10人

12/29
前へ
/133ページ
次へ
「ボク…設楽ゆきはだけど、 」 黒髪の女の子はなにか考え 思いつき 尖った歯で指を噛んだ。 血がでる。 ちょっと強く噛みすぎ、じゃ… 「!!」 設楽と設楽さん… 金髪の男と茶髪さんが、 驚いたように目を見開いた。 「アらァ…意外と思イキりマスネぇ」 設楽… 銀髪が笑う。 「そうだね」 俺は黒い壁に寄り掛かる。 この部屋は 黒い壁と黒い床。 だから黒髪の女の子の指からたれた血が 目立つ。 女の子は 黒い壁に、 おもむろに傷ついた指をつけ 『設楽 ゆきは』 と書いた。 ひらがな、なんだ。 ゆきはちゃんね。 「皆同じ名前なら、ゆきはちゃんは【姫】って呼ぶわね」 茶髪さんは、すっかり落ち着いて 『姫』を見た。 「…ん…」 姫は微笑んで、 赤い指をなめた。 その姿は無邪気で とても残酷で そしてかわいらしかった。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加