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「ねえ食べないの?」
硝子の器がふたつ、テーブルの上に乗っている。ひとつは彼女の、ひとつは僕の。
「こんな時に、食べる気なんてしない」
少し怒りを込めた言い方をしてみた。
「あたしのおごりだよ? 最初で最後の」
彼女は真顔で、そう答える。自分のを黙々と食べ続けながら。それはいつもカロリーを気にして、絶対注文なんかしない「苺パフェ」。
「なんで最後なの」
今度は感情を込めずに、問いかける。
「……だから、あたし今日死ぬんだってば」
彼女はずっと、さっきからこんな調子。ただ僕を困らせたいだけなのか、それが本心からの言葉なのか、僕には見当もつかない。こんなとき僕はどうすればいい。君は僕にどうして欲しい。
「意味、わかんないんだけど」
この空気は異様だ。
「……分かってよ」
彼女は悲しく微笑む。
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