イチゴパフェ

3/9
前へ
/9ページ
次へ
「苺パフェ、僕の分あげるよ」  僕がおどおどと彼女の瞳を覗き込むと、彼女は目をそらしてしまった。そして一言。 「……食べてよ」  喫茶店の中は、暖房が利いている。冬のイルミネーションが、店内をささやかに飾っていた。曇った窓ガラスの向こう側は、気温マイナスの世界。  僕と彼女は会話もなく、苺パフェをほおばっている。生クリームの甘味が、口の中に広がる。そろそろ気持ちが悪くなってきた。 「もうムリ。残り食べてくんない?」  スプーンの生クリームを舐め取る。もう、限界だ。 「やだ」 「なんで」  僕が聞き返すと、彼女は銀色のスプーンをくわえながら答える。 「あたしを太らせる気?」  彼女のほっぺには生クリームがついてる。 「今日、死ぬんでしょ?」 「うん」 「……だったら、カロリーオーバーなんてへっちゃらだよな」  わがまました罰だ。ほっぺの生クリームだって、取ってやんない。教えてやんない。この店を出てから通行人に大笑いされればいい。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加