1人が本棚に入れています
本棚に追加
「苺パフェ、僕の分あげるよ」
僕がおどおどと彼女の瞳を覗き込むと、彼女は目をそらしてしまった。そして一言。
「……食べてよ」
喫茶店の中は、暖房が利いている。冬のイルミネーションが、店内をささやかに飾っていた。曇った窓ガラスの向こう側は、気温マイナスの世界。
僕と彼女は会話もなく、苺パフェをほおばっている。生クリームの甘味が、口の中に広がる。そろそろ気持ちが悪くなってきた。
「もうムリ。残り食べてくんない?」
スプーンの生クリームを舐め取る。もう、限界だ。
「やだ」
「なんで」
僕が聞き返すと、彼女は銀色のスプーンをくわえながら答える。
「あたしを太らせる気?」
彼女のほっぺには生クリームがついてる。
「今日、死ぬんでしょ?」
「うん」
「……だったら、カロリーオーバーなんてへっちゃらだよな」
わがまました罰だ。ほっぺの生クリームだって、取ってやんない。教えてやんない。この店を出てから通行人に大笑いされればいい。
最初のコメントを投稿しよう!