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喧騒の中、二人の男が走っている。
辺りには火が放たれているのか、夜中だと言うのに真っ赤な明かりに照らされていた。
「教授、一体これは………」
二人の内の黒縁眼鏡をかけた神経質そうな若い男が息を切らせながら呻く様に呟いた。
「さあな、判っている事は連中がロクでもないってだけだ。手口から判断すれば相当ヤバい奴等なのは間違いないだろう」
教授と呼ばれた中年の男は苦虫を噛み潰した様な顔で吐き捨てる。
「ようやく試作壱号が完成して、試験段階に入ろうと言う所だったのだが、こんな事で延期させられるのは些か不本意だな」
「ですが、確認出来ただけでも完全武装した奴等が二十人はいました。教授の強さは知っているつもりですが、多勢に無勢では如何ともし難いですよ」
「判っている!
だが、試作壱号と研究データは是が非でも渡さないぞ。白咲(しらさき)君、データは持って来ているんだろうな?」
「勿論です。全データをメモリーチップに落として、パソコンの方にはダミーとウィルスを仕込んでおきました。奴等を多少は混乱させられるでしょう」
「よし、二手に分かれるぞ。
私はデータを持つから君は試作壱号を持って行きたまえ」
「判りました。奴等に渡さない様に全力を尽くします」
炎を背後に二人の男は二手に別れてその場を後にした。
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