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五月も下旬入った晴れやかな早朝、閑静な住宅街にいきなり轟音が鳴り響く。
かなり傍迷惑な筈だが住民達はまるで気にならないらしい。
轟音は一発しかなかったのでみんな目を瞑ったのかも知れない。
轟音が放たれた家はかなり広い敷地で、純日本風の二階建てと大きな平屋があった。
二階建ての方は普通の家と大きさは変わらないが平屋の方は三百畳以上ありそうでとても大きい。
表札には「皇」(すめらぎ)と書いてあり、表札の隣には「皇流格技術」と書いてある看板がデカデカとついていた。
庭も広く樹木や岩が配されてさながら美しい庭園の様だ。
庭の一角に井戸があり、上半身裸で白い胴着のズボンを穿いたまだあどけなさの残る少年が水を汲んで頭から思いっきり被る。
なんだがズタボロであちこちが煤けている。見た目は尋常ではないが大した事ないらしく、動きには一切の淀みがない。
「朝早くから物凄い大きな音がしたけど、大丈夫?」
少年の背後に桶を持った少女が立っていて少年に尋ねる。
少女は少年よりも幾分若い感じで兄妹なのか、よく似た顔立ちをしている。
「あぁ、瞳子(とうこ)か。朝は格技だけって決めていたのに、僕が圧倒するとなりふり構わずに来やがった。
ジジイの癖に大人気ないヤツだ」
「格技だけとは言えお爺ちゃんを負かすなんて凄いじゃない」
「僕だって皇流の目録を貰っているんだ。純粋な格技だけなら大差ない証拠だよ。
後は作戦次第だから麗児(れいじ)と二人で考えたんだ。上手くいったよ」
「よかったわね。後三十分位で朝ご飯が出来るから、お兄ちゃん、麗児を起こして来て」
「ん?判った」
タオルで水気を拭っていた少年は気軽に了解した。
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