七日目

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 後奏(こうそう)まで全部弾き切ることは潤人は出来なかった。  涙が止まらず、息をするのもやっとになってしまったからだ。  弾こうとすることを辞め、口に手を当て嗚咽(おえつ)を漏らす。  そんな潤人の姿に会場は(ざわ)つく。  潤人はイヤモニを外し、ピアノの上に置く。 「……ないで……」  あたしだけに(かす)かに聞こえた潤人の声。  でも何て言ったのか……。  あたしは潤人の元へと歩み寄る。  歩み寄るというか……足を床に引きずるようにして飛んで行く。  眠くて……本当に眠過ぎて……もう高度も保てないみたい……。  くっ……お願い、後少しなんだから……動いてよ……!  なんとかピアノにたどり着き、潤人の隣に立つ。 「潤……人……?」 「……消えないで……」  絞り出すかのような、か細くかすれた声。 「行かないで菜々花……!」  涙でぐちゃぐちゃになった顔であたしを見上げる潤人。  あたしが今日消えるってこと、気付いてた……? 「菜々花を……愛してる……」  潤人が……  泣いてる……  あたしの大好きな潤人が  あたしを好きだと言って  泣いている……  泣いているよ……!  泣かないで……  潤人にこんな顔させたくない  潤人に悲しい思いなんか微塵(みじん)もさせたくない。
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