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潤人は勢いよくイスから立つと、客席に向けて深く一礼し、舞台袖へと走り出した。
「おおおおいっ、潤ちゃん!今の光って……」
袖で見守っていた侑が潤人に慌てて問いかけるが、潤人はそのまま走って行ってしまう。
「ごめん、ちょっと抜けさせて!!」
「えぇっ!?」
既に潤人の姿は見えない。
「何だよ、もうー!説明くらいしてけっつのー!」
頬を膨らます侑に恒汰が肩を組む。
「ま、客席は拍手喝采だからいいんじゃない?」
会場を飛び出てタクシーを捕まえる。
「病院まで!!」
物凄い剣幕で運転手にそう伝えると、祈るように両手を組む。
「菜々花……本当に消えちゃったの……?」
無意識の内に呟く言葉。
運転手は心配そうにバックミラーで後部座席を覗き込む。
「お客さん素敵な格好してるけど……結婚式か何か?あ、でも病院か……」
「あ、服……」
そこで初めて潤人は真っ白なタキシードの衣装のまま飛び出して来てしまったことに気付く。
「いや……彼女に告白したんですけど……これから返事を聞きに行く所なんです」
微笑む潤人。
それを見て運転手も安心したのか笑顔を見せた。
「そうかぁ~!でもお客さん、えらく男前だからきっとOKだよ!嬉しくってきっと病気も治っちゃうだろうね!」
運転手の明るい声に潤人も笑みを見せる。
「ありがとうございます」
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