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夜はぬくぬくベッドの中。
という人はいるし、寒い夜空の下でゴミ箱を漁る人もいる。
私にとって世界は不公平なのが当たり前だった。
誰かに手を差し伸べないし、誰からも差し伸べられることはない。
私は、冬の寒波にさらされる、ただの野良犬の側だったから。
塀の向こう、暖炉がついた屋敷の中を想像しながら、ただ一人で路上をさ迷う糞餓鬼。
それがかつての私。
世界の排泄物、救われないし救えない。
それがかつての私。
物事を解決させるのは、金と拳銃と暴力。
私は人なのか野良犬なのか、私自身でもわからなかった。
私が行き倒れになった日も、特に怒りはなかった。
9ミリの弾丸が私の肩を抉っていた。
痛かった。
寒かった。
窓から暖かな明かりが漏れていても、感じたことといえば「ああこういう世界なんだな」くらいだ。
私の死体が路上に転がって、誰かが私を片付ける。
私が死んで、代わりに誰かが裕福になる。
子供ながらそんな考えが私にはあった。
私の人生はなんだったのか、とか、なんで生まれてきたんだ、とか、そんな人間らしい感情は沸いてこない。
不思議なことに。
野良犬らしい、私の最期だ。
最期、だった。
「この汚いのはなんですの?」
頭の上から降りかかってきた言葉は、ずいぶんとうるさかった。
見上げてみれば、ずいぶんと綺麗な服を着た女の子が立っていた。
人目でわかったよ。塀の向こうの人間だ、って。
“糞”餓鬼をひり出した“人間”の一人。
傷ついた子犬でも拾う感覚だったのかもしれない。
私は、人間に拾われた。
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