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日本帝国の南側は知らないが、私のいる地方は涼しいか寒いしかない。
毎朝の庭の掃除は私の日課だ。吐く息は手袋のように白く、冷やされた箒はまるで氷のようだ。
枯葉は幾ら掃いて燃やしても、次の日には庭を茶色に染め上げてしまう。
困ったもんだ。
せめて家から門まで続く、敷石の上だけでも綺麗にしておかなければ。
一枚でも枯葉があると婦長にどやされる。
あらかた片付けたころ、私の腕時計は七時を過ぎていた。
お嬢様のお下がりなのだが、純銀やダイヤまであしらった腕時計。
お嬢様いわく、近くにいたいならちゃんとなさい、と。
木々の向こうの日射しが、宝石に反射した。
これはある日のこと。
お嬢様の世話係として、学園に同行しました。
これはよくあることだし、貴族学校ではそれが当たり前。
世話と言っても、やることは荷物持ちと昼食の用意が主だ。
そのせいで暇な時間が圧倒的に多い。
待機中はどうするかというと、その教室の廊下に召し使いの執事やメイドが廊下にズラーッと立ち並んでいる。
初めて見たときは、圧巻されました。
立ち尽くすことがどれほど苦痛かもよくわかります。
ただ……学園内に銃を持ち込んでいるのは、どうやら私だけではない。
見るからに体格がよく、何らかの訓練を受けたであろう召し使いも見かける。きっと銃を忍ばせているはず。
立ちっぱなしだが、召し使いにもそれなりの配慮が。
休憩は一時間に一回、ただし五分だけ。
しかも時間を他の人よりわずかにずらすため、非常時になっても常に貴族の雛は安全に避難させられる。
その非常時が、過去に一度だって起きたことがありませんが……。
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