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日本刀や悶絶する男性を捨て置き、私とお嬢様は並んで歩いて戻った。
「なにやってんのよ役立たず! 軍人仕込みはどうしたわけ!? 信じられないわ」
ボロクソに言われる彼が、なんだか不憫に感じた。
不憫には感じますが、解雇されるたとしてもそこまで面倒は見ません。
この決闘、今月だけですでに十回を越えてる。もういい加減にして欲しい。
玄関から校内に入る。
「お嬢様、決闘は控えてください」
「なぜ? 侮辱に耐えるどうりはないわ」
時には耐えることも大切だと思う。
上履きに履き替えて教室へ。
「とにかく悪口も醜聞も――」
ぴたりとお嬢様の足が止まり、私の手を強く握る。
おまけに顔色は真っ青。
「前……!」
前?
前、には壁があるだけで……あー、よく見ると黒い虫がいる。
お嬢様いわく、その名前を口にするのも汚らわしい不愉快極まりない人類の敵、とのこと。
つまり、ゴキブリ。
その人類の敵がこちらに向かって飛び立ってきたっ!
「ッ、きゃああああああああっ!」
悲鳴を上げて私の胸に飛び込むお嬢様。
ナイスゴキブリ。
私はさっとその人類の敵をかわし、それはどこかへ飛び去っていく。
腕の中にお嬢様がいる。途方もなく嬉しいものの、いつまでもこうするわけにはいかない。
悲鳴を聞き付けた警備員が駆けつけて、あらぬ誤解をされてしまう。
お嬢様はすでに婚約中の身だ。だから私のせいでお嬢様の世間体を汚すわけにはいかない。
「お嬢様、もう大丈夫ですから」
引き剥がしたころに警備や野次馬がやってきた。
「大丈夫です。もう解決しましたので」
お嬢様を引き連れ、苦笑しながら教室へ向かう。ゴキブリ相手に叫んだとあっては、お嬢様のことだ、きっと恥に思う。
どうやら清掃が行き届いていない場所があるもよう。
と、まあ、こんなことが学園で起きています。
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