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こんな風に、誰かに振り回されるのが楽しいと感じるのは、きっと私が豊かになった証拠かもしれない。
帰宅後、寝静まった屋敷の中、私は居間の暖炉のかがり火を受けながら拳銃を解体していた。
愛用のベレッタだ。
なんでもそうですけど、手入れを怠ると肝心な時に動作不良を起こしてしまう。
特にスプリング。これが錆びていたら弾詰まりを起こしかねない。
小さな塵を綿棒で拭き、油を挿し、また組み立てる。
揺らめく灯りを放つ暖炉に、銃口を向けた。
今は銃口を向けるべき人はいない。
麻薬売買のライバル相手、押し込み強盗の家主、同じ野良犬のような糞餓鬼。
それらはここにはいない。だから本当は、拳銃なんか必要ないかもしれない。
日本帝国軍で鍛え上げられた、八人のSPも常駐している。私が拳銃を持つ必要がない。
それなのに私は拳銃を手放せずにいた。私が野良犬から抜けきれていない証拠だ。
背後で物音。
すかさずマガジンを挿入。背もたれに拳銃を隠し、後ろのドアを振り返る。
ドアが開く。
侵入者……なわけがなく。
「……まだ起きてるの?」
お嬢様だった。
時計の針は十二時を回っている。確かに少し夜更かし気味だ。
「いえ、そろそろ寝るつもりです。お嬢様こそ、早くお休みになられては?」
「風の音がうるさくて眠れませんわ」
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