先制攻撃

5/5

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
足取りが重い。 一生懸命歌っても街の目は冷たい。 二人はまた百円ロッカーの前に戻ってきた。 「なぁ…サカケン…」 東が話し出す。 「ん?」 サカケンはギターを足元に置いた。 「俺達いつまでこんなんやってんだ!?俺…さっさとメジャーデビューしてぇよ…!!俺達の実力なら紅白も余裕だって!!!」 そんなの夢のまた夢だ。 「何言ってんだよ東…今日もこの前も…誰か俺達の歌聴いてくれたか!?…メジャーデビューなんて夢のまた夢だ…」 「はぁ~…」 二人は深いため息をついた。 駅のデジタル時計が 18:45 に変わった。 「帰ろうぜ…サカケン」 東はギターを肩にかけた。 「…うん…」 ――ロッカーの中身出さなきゃ ロッカーの取っ手に手をかける。 「……!!!!!!!!!」 急にサカケンの顔が青ざめた。 「どうした?サカケン?」 「財布…中だ…」 「え?」 「ロッカーの中に財布があるんだ…ロッカーが開けられない…」 「うそだろ?」 「帰れない…」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加