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足取りが重い。
一生懸命歌っても街の目は冷たい。
二人はまた百円ロッカーの前に戻ってきた。
「なぁ…サカケン…」
東が話し出す。
「ん?」
サカケンはギターを足元に置いた。
「俺達いつまでこんなんやってんだ!?俺…さっさとメジャーデビューしてぇよ…!!俺達の実力なら紅白も余裕だって!!!」
そんなの夢のまた夢だ。
「何言ってんだよ東…今日もこの前も…誰か俺達の歌聴いてくれたか!?…メジャーデビューなんて夢のまた夢だ…」
「はぁ~…」
二人は深いため息をついた。
駅のデジタル時計が
18:45
に変わった。
「帰ろうぜ…サカケン」
東はギターを肩にかけた。
「…うん…」
――ロッカーの中身出さなきゃ
ロッカーの取っ手に手をかける。
「……!!!!!!!!!」
急にサカケンの顔が青ざめた。
「どうした?サカケン?」
「財布…中だ…」
「え?」
「ロッカーの中に財布があるんだ…ロッカーが開けられない…」
「うそだろ?」
「帰れない…」
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