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俺たちは目の前にあるファミレスに入った。
今までそれどころじゃなかったが亜梨沙は綺麗な子だった。長い黒髪に大きなアーモンドのような目。俺の姉貴が小さいとき遊んでいたリカちゃん人形に似てると思った。
「びっくりさせてごめんね」
「いいえ。たしかにびっくりはしましたが」
亜梨沙の笑顔につられて俺も笑った。
「あはは…俺かっこわりーな…」
「男の人の泣いてるところはじめて見ました。格好悪くなんかないですよ」
「あはは…」
「理由聞いちゃだめですか?」
「ん……」
こーたのこと話さない方がいいよな……。
「私なら大丈夫ですよ?」
亜梨沙は何となく気が付いたんだろうか?
「じゃー話すね…」
俺はこーたのことを話した。亜梨沙は静かに俺の話を聞いていた。
「私が携帯を見つけた日に事故にあわれたんですね」
事故現場近くのパーキングに停めていた亜梨沙の車。その車のバンパーにひっかかったこーたの携帯のストラップ。
こんなことあるんだな……。
俺は亜梨沙に俺とこーたのことをたくさん話した。こーたが、どんな人間だったのか聞いて欲しかったのだ。友達さえ話題にしなくなったこーたのことを。
こーたが忘れられていくのがかなしかった。
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