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初めて翔さんと話してから1ヵ月。
今のあたしは週に3回の楽しみがある。
「笑ちゃーん」
玄関まで来ると、笑顔で手を振る翔さんが見えた。
あたしも小さく手を振り返す。
「佐野先輩って子供みたいだよね」
「ほーんと、そんな感じ」
一緒にいた美子がクスクス笑いながら言った。
あの後知ったんだけど、翔さんはうちの高校じゃちょっとした有名人だったらしい。
うちの野球部は、他の部活より飛び抜けていい成績を残しているらしく、何度も甲子園に出場している。
そんな野球部で、翔さんはピッチャーでエースだったらしい。
だけど高3の時、甲子園の切符をかけた大事な試合の前に右肩を壊した。
今は左投げに転向してるみたいだけど、やっぱ右投げに比べると大きく劣るらしい。
っていうのは、全部美子から聞いた話。
陸上しか興味のなかったあたしは、野球部が強いらしいという事しか知らなかった。
「じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
あたしは美子と挨拶を交わして翔さんの元に向かった。
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