†第0章† クロノエルム

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次の瞬間 二人は森の中にいた。 ただ木が鬱蒼と覆い繁った森。 鳥のさえずりや 風の音もしない。 静かで不気味な森だった。 二人の周りには クネクネと曲がりくねった奇妙な木が生えていた。 「……ん…?ここは…?」 「………どこ? 何が起きた?」 二人は呆然と立ち尽くすだけ。 今の状況を全く把握出来てなかった。 「何で俺達ここにいるんだっけ……?」 京介は怪訝そうな顔で 翔一に尋ねた。 「ええと…、確か京介の家にいて……。 ゲームしようとした………。 そしたら…ここにいた。 はっ!まさか? ゲームの世界!?」 「はぁ?んな訳ないだろ! どこにゲームの世界なんてあるんだよ。 それはありえない!!」 「なんだよ。ゲーム屋の息子なのに 意外と夢のない奴だな……。 だったらお前、ここがどこだか分かるのかよ?」 「…………………………。」 「分からないんじゃん。」 翔一は呆れて ため息をついた。 「まあ、ここにいてもしょうがないから ひとまず歩いてみるか。」 翔一の提案に京介は無言で頷き 二人は歩きだした。 何十分か歩いたが 森の中はずっと似たような風景のため どのくらい歩いたか分からなかった。 しばらく二人は無言でいたが 翔一が先に口を開いた。 「……おい。 あそこになんかあるぞ?」 大きな木の下 根が張り巡らしている所に 得体の知らない茶色い物体があった。 何より森の中は薄暗いため 何があるかは、はっきり分からなかった。 「え?あれは………。 人じゃないか?」 京介は目を凝らした。 確かによく見ると 人のようにも見えるが もしそれが人だとすると 倒れている状態にある。 「………大変だ!人が倒れてる!」 二人は慌てて人に近づいた。 倒れていたのは高齢の男性で 茶色いマントのようなものを羽織っていた。 呼吸はか細く 昏睡状態のようだ。 ひどい出血こそないが 所々に傷がある。 しかし奇妙な傷だ。 切り傷と言うよりは 肉をえぐられたような傷だ。 「おじいさん!?大丈夫ですか?」 「……………………。」 声をかけたが返事は返ってこない。 それ程まで衰弱していたのだ。 しかし二人がいることには気づいているらしく 苦しそうに目をこちらに向けた。
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