†第0章† クロノエルム

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「ファイの実を知らんとは、情けない……。 ファイの実は傷を癒す秘薬じゃよ。この辺りの森でしか採取出来ないがな。」 「君達、何処から来たんだい? 外国かい?」 おじいさんは怪訝そうな顔をした。 「え、ええ。まあ、外国ですね。」 翔一はしどろもどろに答えた。 「すみませんが、この森から一番近い国は知りませんか? もしよろしければ、連れて行ってください。」 京介はおじいさんを頼りにした方がいいと判断したのだろう。 翔一は少し驚いた顔を見せた。 「ああ、もちろんだよ。 君達は命の恩人だからね。 …そうだな。すぐ近くに『水の国』がある。そこでいいね?」 「ええ、お願いします。」 『水の国』 もちろん二人はそんな名前の地名を聞いたことがないし そんな所があるはずもない。 やはりここは ゲームの世界なのだろうか………。 少なくとも京介はそう思うようになった。 「おい!付いていくのか? 家に帰らなくていいのかよ?」 翔一は老人には聞こえない小さな声で言った。 「ああ、どうやらここは おじいさんに従ったほうがよさそうだ……。」 「水の国って明らかにこの世の地名じゃないだろ? どうやって帰るん─────」 「今はまだ分からない…! だから一回、水の国に行って情報を集めよう。 ここに二人でずっと居ても、何も起きない。 素直に付いていくしかないよ。」 「……………。」 その後二人は黙って 老人に案内される道を歩いていった。 5分程歩くと 道に出くわし やがてすぐに視界が開けた。 森から抜けれたのだ。 森の中の暗さで目が慣れてしまったせいか 木の葉から漏れる陽の光がとても眩しかった。 「ほら、ごらん。 あれが水の国だ。」 老人の指差す先。 森からずっと繋がっている道は 緩やかなカーブを描き 盆地へと続いていた。 その道の最終地点に それはあった。 森から流れる小さな川が国をぐるりと囲み 所々に橋が掛かっているのが見える。 川からは水路のようなものが幾重にも別れて 国の中に編み目状に流れている。 数々の点は恐らく家屋だろう。 水路の編み目に沿って 綺麗に並べられていた。 そして、国のほぼ中央 そこには遠くからでも ハッキリと見える湖があった。 陽の光に照らされ キラキラと輝いている。 その脇に背の高いビルのような建築物。 「…………あれが 水の国………。」
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