†第1章†~水の国~

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二人は大きな橋の前まで来ていた。 水の国と国外を繋ぐ橋である。 水の国の周囲は 森から流れる川で ぐるりと囲まれているため 橋を渡らないと入国出来ないようになっていた。 とは言っても 国を固く囲むような城壁がないため 国の様子は とても自然で開放的に見えた。 二人はいよいよ橋を渡り始めた。 下にはキラキラと輝く水が静かに流れている。 川底が意図も簡単に見え 目を凝らさなくとも 優雅に泳ぐ魚の姿が確認できた。 国の名前の通り まさに水の国だ。 人々は水と共に生まれ 水と共に暮らしているのだろう。 いよいよだ。 二人は橋の終わりまで来ていた。 目の前にはアーチがある。 『水の国』と書かれたアーチである。 これをくぐれば入国だ。 「さて、入るか。」 「うん、そうしよう。」 二人共、多少の躊躇いはあったが 自分の気持ちを押し切って 水の国に足を踏み入れた。 国の様子を一言で表すと 裕福、円満といった感じだ。 通りすぎる人、一人一人が皆笑顔で 女は楽しそうに会話をし 男は生き生きと農作業をしている。 国全体が活気に満ちていた。 「ここが、水の国か……。」 翔一が言った。 「まずは、俺達がなんでここに来たか調べるとするか。」 京介が言った。 しばらく国の中を歩いていると 男の人に声をかけられた。 どうやら農作業の途中だったようだ。 頭には麦わら帽子 Tシャツ一枚にジーパンを着てかなりラフな格好だ。 そして右手には鍬 左手にはバケツを持っていた。 背はあまり高くなく 短髪の黒髪は何処となく翔一に似ていた。 「おう、そこの坊や達 この国じゃ見かけない顔だな。 どっから来たんだ?」 京介は一瞬 何故、自分達が国の外から来たと分かったのだろう と思ったが それもそのはず 水の国は人口400人というごく小さな集落だ。 国にいる子供の顔を覚えるなど 意図も簡単なことだ。 更に二人は 現実世界にいた時と 全く同じ格好をしていた。 つまり国内ではとても浮いた存在なのだ。 これでは旅人だと判断されてもおかしくはない。
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