†第1章†~水の国~

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男は一つ咳ばらいをして 今度は真剣な顔して二人に話し始めた。 「君達のように別の世界からやって来た という人に出会ったのは君達が初めてではない。 むしろ何回も出会っている。」 京介と翔一は黙って聞いていた。 まさかすぐ出会った人に 真実を明かされるとは思ってもいなかったのである。 「来る原因は不明 そして来る時間・時期は不規則 人数も不特定多数な上に 年齢・性別・人種などもバラバラだ。 しかし ひとつだけ分かっていることがある。」 男はそう言い 右手の人差し指を立てた。 「来る直前までゲームをしていたんだ。」 「……ゲーム……。」 「あ、僕達もやってました! ゲームをやろうしたら、こっちの世界に………」 「やはり、そうか……。 そう、それが故にこっちにやって来た人々は みんな口を揃えてここの世界の事をこう呼ぶ………」 二人は生唾を飲み込んだ。 「ゲームの世界『クロノエルム』と………。」 静かな沈黙が訪れた。 二人は信じたくはなかったが これは紛れも無い真実だ。 この世界は ゲームの世界で 二人が居た世界とは別の異世界。 そう考えると 急に恐怖と不安が襲ってきた。 「も、もちろん元の世界に戻ることは出来ますよね? まさかこの世界で一生暮らすなんてことは………………」 京介は助けを求めるように 声を上ずらせながら言った。 「………分からない……。 何せよそから来た奴らがどうなったか知らないからな。」 男は静かに首を振った。 翔一はその言葉を聞くと 思わず俯いて 湿ったため息をついた。 「ただし……… これは俺達、こっちの世界の住人の勝手な推測にすぎないが……………」 「え? なんです?」 京介は密かに期待し 翔一は静かに顔を上げた。 「ゲームには必ずボスっていうものがあるだろ? ボスを倒せば……元の世界に戻れるんじゃないか……?」 「それって、裏を返せばボスを倒さない限り、元の世界に戻れないってことですよね?」 翔一は冷静に切り返す。 「………………………。」 男は腕を組み どう答えようか思案する。
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