†第1章†~水の国~

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「俺の推測が正しければ そういうことになる。」 「そんなっ! だって僕らまだ子供だし 装備だって無い、戦闘能力だって無い! どうやって戦えと………!」 京介は椅子から勢いよく立ち上がった。 「ああ、だから無理して元の世界に戻ろうとしなくてもいい。 この世界でも充分に暮らせるし 水の国においてはとても平和だ。」 男は一呼吸ついて 一杯お茶をすする。 「何だったら俺の家に住んでもいい。 どうせ俺は一人暮らしだしな。 な~に、二人分の食糧くらい俺が何とかするさ。な?」 男は気をつかって 二人に優しく問いかけるが 二人からは返事が返ってこなかった。 京介は力無く椅子に座り込み。 翔一はただ一点を見つめていた。 「…………………………。」 男の家には暖かい日差しが 降り注ぐ。 それと反対に 家の中は冷たい沈黙が張り詰めていた。 「………お、お前ら腹減っただろ? 金渡すから美味い飯でも食べてこい。 国の中央に行くと、店がたくさんある。 そこで食べてこい。」 男はほぼ無理矢理 二人に何枚かの金貨を渡した。 金、銀、銅の3種類だ。 それぞれの重さと 刻まれている模様が違かった。 「俺は農作業の続きがあるからな。 夕方くらいまで好きに遊んでこい。」 男は二人の飲んでいた湯のみを片付けると 鍬を再び持って外に出ようとした。 「おっと!金の使い方が分からねぇか。」 男は思い出したように言った。 翔一が持っていた金貨を 一度、男が預かり 二人に見えるように一枚ずつ説明した。 「この銅色のやつが『P』という。 金貨の最小単位だ。」 男は銅色の小さい金貨を渡す。 「次に銀色のやつが『G』だ。 Pが10枚で1Gになる。」 銀色の金貨を出した。 「最後に金色のやつ、『D』だ。 Gが10枚で1Dになる。」 金色の金貨を翔一の手に置いた。 「お金の数え方だが…… 『クロン』というのを使う。」 男は翔一が持っている金貨を 指差してこう言った。 「まあ、この場合だと 852クロンと言う。」 翔一の手にはDが8枚、Gが5枚、Pが2枚あった。 日本円にして852円と同じである。 「他に紙幣が2種類ある。 『K』と『Z』だ。Dが10枚で1Kに、Kが10枚で1Zになる。」 きっと日本の千円札がK 一万円札がZにあたるのだろう。 「すぐには覚えられないとは思うが そのうち慣れるだろ。」
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