†第1章†~水の国~

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「よし、じゃあ、俺は行ってくるぞ。 …………あ、最後に一つだけ。」 男は立ち止まり 二人に伝えた。 「魔女ババアには気をつけろ。」 男は家のドアを開け 農具を持って外に出て行った。 「……魔女ババア……? ……なんだ?」 「………………さあ?」     *     *     * 二人は国の中央区に来ていた。 男の家からはそんなに遠くなかった。 道なりに進めばすぐの距離だ。 今まで 農村や牧場といった酪農家が 多く住んでいると思っていたが 中央区まで来ると 百貨店や日常雑貨屋などのショップも多く見られた。 なかでも一際目を引き付けるのが 大きな公園の中にある湖と そのすぐ隣にあるタワーだった。 「わぁ~、スゲー!」 「これがウォータータワーか……!」 湖を中心にして広がるキレイな花壇は 歩行者のためにしっかりと舗装され 道は公園の隣にあるタワーに続いていた。 湖は定期的に噴水から 水が噴き出され 二人のはるか上空を潤している。 湖の水は花壇のスプリンクラーの役目を果たすだけではなく 国の外で見た水路のように 住宅街に流れている。 この湖の水も国民の大事な生活水になっているようだ。 一方のウォータータワーだがとにかく高い。 二人は最上階を見上げたが 首が痛くなるほどだった。 中に入るためにタワーに近づき 二人は初めて気がついた。 「これ……、水が入ってるよ!」 遠くから見ると 青く塗装された壁のように見えたが よく見ると、タワーの壁は強化ガラスで出来ていて 中には水が入っていたのだ。 しかも全面ガラス貼り。 驚くことに小さな魚が所々で泳いでいるではないか。 「ははっ!これでウォータータワーな訳か。」 京介は感心したように 水の壁をペタペタ叩いた。 入り口は壁と同じようにされ アーチ状にぽっかりと穴が空いてる感じだ。 二人は興味津々で中に入った。 そこには賑やかな世界が広がっていた。
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