†第1章†~水の国~

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丸いタワーの内部をたどるように 様々なショップが立ち並び 沢山の人が行き来している。 まさに現実世界でのデパートのような所だ。 「うわぁ~、すごい!」 「食料、衣服、薬剤、家具、家電、書籍、便利道具……… 生活に必要な物は全部揃ってるよ。」 京介は至る所を見て 満足げな顔をしていた。 「京介! これ何かな?」 翔一はだいぶ遠い所まで離れていた京介を連れ戻し フワフワと浮かぶ奇妙な円盤を指差した。 複数個並んで浮かんでいる。 なんとも不思議な光景である。 円盤は半透明の円柱形のベールに包まれている。 ウォータータワーと形が少し似ていた。 翔一が一歩近寄ると 突然円盤がくるんと回り 円盤についたスピーカーから声が聞こえてきた。 「水圧ワープ装置。水圧ワープ装置。 ご希望の階まで瞬時に移動することができます。」 軽やかなメロディーも一緒に聞こえてきた。 京介は翔一の顔を見たが これはもう乗るしかないといった顔だった。 案の定、翔一は躊躇うことなく 水圧ワープ装置の円盤に足を乗っけた。 仕方なく京介は 翔一の隣に浮いていた円盤に 恐る恐る足を置いた。 「ご希望の階は何階ですか?」 「ん~、じゃあまず最上階で。」 翔一は円盤の声にそう返答した。 「それでは最上階まで参ります。」 「うわあああぁ~………」 「うおおおおぉ~………」 それは一瞬だった。 わずか数秒で二人は最上階に着いた。 「ぁああああああっと!!」 「こ、鼓膜がぁ………!!」 湖から引き上げた水を 一気にワープ装置まで送り その水圧を利用して円盤を押し上げる。 それが水圧ワープ装置の仕組みだった。 急激に高度が上昇するため 当然、耳の鼓膜がおかしくなるのだ。
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