†第1章†~水の国~

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「ずいぶん荒っぽい乗り物だな…………。」 京介はそう言い 二度と乗らないと心に誓った。 最上階は展望台になっていた。 展望台もガラス貼りのため 水の国を360゜見渡せることが出来た。 二人はしばらく展望台からの景色を楽しんだ。 地上を歩く人があんなに小さいとか タワーが何メートルあるかとか 毛虫と青虫のどっちが強いかなどを話している時だった。 「ねぇ、これ何かな?」 翔一は楽しそうに言った。 翔一の目線の先には赤いボタン。 箱にタイヤが4つ付いたようなものに 赤いボタンがあった。 翔一は今まさに ボタンを押そうと手を伸ばしていた。 「ちょっと待った!」 京介がそう言った時には もう遅かった。 「毎度、水の国案内システムをご利用頂きありがとうございます。 利用料として10P頂きます。」 箱から音声が流れたかと思うと アームがにゅっと伸びてきて 翔一が持っていたお金を勝手に取られた。 「アホ。」 京介が怒って言ってるのか冗談で言ってるのかわからない つまりは普通の声で言った。 「ゴメン、京介。」 翔一が申し訳なさそうに言った。しかし、反省している様子は無かった。 「では、まずこの国のことについてからご説明致しましょう。」 二人の間に不穏な空気が流れる中 このロボットは気にもせず 淡々と説明を始める。 「この水の国は北部の森から流れる川により 豊かな水資源に恵まれています。 特に川の上流で行う養殖はこの地域において 漁獲量1位を占めております。」 「そんなの言われなくても分かるよ…!」 京介が言った。 「まあまあ、そう怒るなって。 ………あ、あの湖について詳しく教えてよ。」 翔一は京介を気に止めることもなく ロボットに説明を促す。 「あの湖は『清らかな湖』と呼ばれている国を代表する湖です。」 ロボットに取り付けられた小型モニター。 そこに湖の縮小図が映る。 「面積約7k㎡、最大水深13m 様々な魚類が生息し 冬には野鳥の飛来も見ることができます。」 「そして極めつけは噴水です。」 モニターに湖の中心部分が映し出される。 噴水が大きく映った。 「国の地下にある膨大な量の地下水を汲み上げ 噴水に送り込んでいます。 噴き上げる水の高さは時に100mを越すこともあります。」 京介はどことなく湖の噴水を眺める。 ────あれ?
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