†第1章†~水の国~

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噴水が高々と 噴き出した時だった 京介は 不審な行動をする男を見つけたのだ。 湖の淵に座り ボンヤリと日なたぼっこをしているだろう 老齢の男性。 男性がいきなり湖に何かを 投げ入れるような動作を見たのだ。 「え?………何今の?」 湖の周りにいる人は とりわけ、気にする様子もない。 魚の餌でも 投げたのかもしれないな…… 京介は心に何か 引っ掛かるものを感じながらも そう思いこむことにした。 それが後に大問題になるとは 知らずに……………。     *     *     * 二人はウォータータワーの外へ出ていた。 二人の足どりは重く 全身に疲れを漂わせている。 すぐに帰ってくる予定だったのだが 昼食を食べたり 店舗を覗いているうちに 結局、すっかり夕方になってしまったのである。 そんな中で 帰る行き先は 例のあの男性の所だ。 男の迷惑になる訳で 若干の申し訳なさはあるものの 他に行く所もないし 男は心よく受け入れてくれているのだから 遠慮する訳にもいかない。 こうして 二人は再び男の家へと お邪魔することになった。 家のドアを開けると 男は大皿をリビングのテーブルに並べていた。 皿の数はしっかり人数分 つまり3人分ある。 キッチンからは おいしそうな匂いがしてくる。 「よう、お前たち ちょうどよかったな。 今出来上がったところだ。」 男は椅子に座るように 促したので、それに従った。 「すみません、夕飯まで用意させて貰って………。」 二人してペコペコ謝る 奇妙な光景になったが 男は気にしないでニコニコしていた。 「あの……… 申し遅れましたが 僕は翔一、こっちは京介です。」 「翔一に京介か、よろしくな。 俺は『ラルス』だ。」 「さぁ、冷めないうちに食べろ 今日は疲れただろう? 寝床は2階にある 自由に使ってくれ。」 二人は遠慮なくご馳走を戴くと 特に手伝うこともないと言われたので 早々に2階にある 寝室へと向かった。
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