†第1章†~水の国~

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「翔一? 起きてるかい?」 暗くなった部屋に 京介の声が響いた。 「ああ。」 翔一はベッドに寝そべっていたものの 返事はすぐに返ってきた。 「これからのことなんだけど……… 話し聞いてくれるか?」 「…………ああ。」     *     *     * 次の日の朝 二人はほぼ同時に起きた。 ただ自然に起きたのではない。 誰かの叫び声で 飛び起きたのだ。 二人は声のした方に駆け付けるため 1階へと降りた。 ラルスは既に家にはいないようだった。 外へと抜けるドアは 開け放たれたままだ。 よほど急いで外に出たのだろう。 閉めるのを忘れたらしい。 二人はそこである異変に気が付いた。 異常な程の悪臭。 下水道のような腐臭が部屋に充満していた。 二人は思わず口と鼻を塞いだ。 「ごほっ……… なんだこれ……………」 どうやら臭いは 外から来ているようだ。 二人はドアの近くまで 恐る恐る進んだ。 「……………………………。」 外の景色は 昨日の景色とはまるで違っていた。 綺麗に舗道されていたはずの 道という道がヘドロのような灰色の水に浸っていた。 悪臭の元はこのヘドロらしい。 「なんで………………こんな……………。」まさに街中がヘドロまみれになっていた。 しばらく二人は 呆然とドアの内側で立ち尽くしていた。 すると長靴を履いたラルスが ばしゃばしゃとヘドロを撒き散らしながら 二人の居る所に駆けてきた。 全身にヘドロがついていて 酷い有様である。 臭いを防ぐために口まわりに バンダナを巻いていたが ほとんど意味をなしていないようだった。 「ああ、君達! 今起きたか………!」 「ラルスさん!! これは一体……!?」 京介は込み上げる嗚咽を 必死に抑えこみながら言った 「いや………私にもわからないよ ただどうやらこのヘドロ 噴水から溢れでているらしい………」 「噴水ってあの綺麗な………… 何が原因です?」
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