†第1章†~水の国~

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「この世界はな 一流の魔法使いにでもなると 炎を出したり水を出したり それこそ汚い水を出したりなんて簡単に出来る輩がたくさんいるんだ」 「ってことは…………」 「ああ、確信はないが これは自然に起こるものではない 恐らく魔法使いや魔術師 その他正体不明の人間が起こしたものだろう………」 ラルスはそう言って 体中についたヘドロを手で拭き取ろうとするものの 手についたヘドロが体にべっとり広がるだけだった 「………一体誰が」 「だいたい予想はついている」 ラルスは呟くように言った 「え!? 誰です?」 京介と翔一は驚いて聞くが ラルスが答える前に遠くからの声に遮られた 「おい!! 連れてきたぞ」 その声の主は ラルスと同じくらいの年齢の男だった ラルスの自宅の方へと ヘドロの中を一隻の舟を漕いで向かってきた 言わずもがな、舟はドロドロで見るも無残な姿になっている 舟にはその男だけでなく もう一人乗っていた 黒いマントを被っていたので 京介と翔一は人と判断するまで時間がかかった 舟はラルス達の目の前で ゆっくりと止まり 舟に伴って運ばれたヘドロがずずっと押し寄せた 「舟で来るとは思わなかった 早かったな、ご苦労さん」 ラルスは舟に乗る男に感謝を告げると 次に同じく舟に乗るもう一人に 声をかけた 「さてと……… よくもやってくれたな魔女ババア」 魔女ババアと呼ばれた人 見た目は皺だらけのお婆さんと言ったところだが 頭がすっぽり入るほどの黒マントと手に持った不気味な杖が 怪しい雰囲気を出していた 何故魔女ババアと呼ばれるかは 誰でも一目で頷けるだろう 「ふざけんじゃないよ!! このヘドロが私のせいだって言うのかい!?」 魔女ババアは憤慨して喚き立てた 時々、唾もラルス達に向かって飛んだが ヘドロまみれのラルス達にとっては気にもならないようだ 「その通りだ この国に魔法が使えるのはお前しかいないだろう!!」 「自分の住んでる国にヘドロ流す馬鹿がおるかい馬鹿たれが!! この魔法を使う術者はあんたらが想像してるよりももっと凶悪だよ!!」 90歳は越えているであろう老人は言葉が淀むこともなく 高速で罵倒を繰り出す とてもとても健全なのが 見て分かる 「ずいぶん詳しく知ってるじゃないか……… どういう訳だ?」 男は鋭く魔女ババアを睨んだ 「ふん!! 知らないね ただこのヘドロからは術者の悪意がぷんぷんするよ」 「とにかくだ あんたは事が収まるまで 身柄を確保する」
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