†第1章†~水の国~

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そう言って男は舟から 太い縄を取り出した 縄で縛るようだが 果たして魔女を縄で縛って効果があるのだろうか…… 「勝手にしな!! あんた達は他にもやることがあるだろうが このヘドロ、何とかしないと 国が浸水するどころか 川にまで流れて諸国にまで影響が出るよ!!」 魔女ババアの言葉には耳を貸さず ラルス達は縄を巻いていく その様子を京介と翔一は静かに見ていたが 京介が突如、小さな声で言った 「違う……………」 「ん? どうした京介?」 翔一は京介の声を聞き 様子を窺った 「違いますラルスさん 犯人はその人じゃありません!!」 一瞬世界が止まったかのように 皆が黙った 先に口を開いたのはラルスだった 「………何言ってる京介? この国でこんなこと出来るのは魔女ババアだけだ」 「そうかもしれませんが…… 僕らみたいにこの国には 誰でも簡単に入れます 外の人がやった可能性は大きいです」 京介はそこで一呼吸置き 再び喋り出した 「それだけじゃない 僕、犯人を昨日見ました……」 「なっ!? それは確かなのかい?」 男が言い 続けざまに 「どういうことだ? どこで見たんだい?」 ラルスが言った 「昨日ウォータータワーを見学した時に 展望台からの景色を見たんです 高いですから噴水の様子がよく見えました その時、噴水の脇に座っていた人が 噴水に何かを投げ入れるのを見たんです」 ラルスはそれを聞くと 腕を組み、男と怪訝そうに目を合わせた 「そいつの特徴は?」 「詳しくはわかりませんが…… 男で老人でした」 またしばらく沈黙が続く
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