†第0章† クロノエルム

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翔一には父親がいない。 今は母親と二人だけで 一軒家に住んでいる。 十年前 仕事に出たっきり帰ってこない日が続き連絡もとれず 母親は警察に捜索願いをだした。 地元警察はすぐに対応し その日の内に捜索に乗り切ったが 見つからなかった。 当然、この出来事は 事件になり新聞やテレビにより全国に知れ渡るが 父親の目撃情報も無し。 事件はやがて熱が冷め 「謎の行方不明」 そんな形で迷宮入りしてしまった。 翔一の母親は 父親がいない翔一が 寂しがらないかを心配していた。 それだけが気掛かりで 今まで翔一を一人で育ててきた。 そんな心配をよそに 翔一は明るく元気に むしろやんちゃにうるさい子供に育った。 まったく、親は子供に心配をかけない方が いいのかもしれない。 そんな翔一だが 母親に対して、一切父親のことを 聞いてみたことが無かった。 一見、気にしてないようだが 心の内では父親のことを 思っているに違いない。 聞かないということ自体が 気にしているのだから。 っと、 説明している間に 翔一が学校に着いた。 翔一の家から学校までは けっこう近い。 ものの5分で校門に着いてしまうので 遅刻だけはしなかった。 なんの変哲もない市立小学校。 割りと広めの校庭に ブランコ、滑り台などの 小学校の遊具の定番がある。 そして校庭の北側に校舎がある。 北校舎と南校舎の2つに別れ それぞれ4階建てだ。 翔一が校門をくぐり 校庭を一望した時 異変に気が付いた。 いつも7時40分までに教室に来て 机にランドセルを置いて 友達とドッヂボールをやるというのが 翔一の朝の日課だった。 だが今日はそうではなかった。いつもは友達が先に学校に来ていて 既にドッヂボールを始めているのだが、 「いない…。」 いつもの仲間が ドッヂボールをやっていなかったのである。 (なんだ、今日はみんな寝坊しているんだな。) と最初は軽い気持ちでいたが (おかしい…。全員が学校に遅れるはずがない。) とだんだん思うようになっていた。 終いには 教室まで猛ダッシュで走り 教室のドアを勢いよく開けていた。
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