†第0章† クロノエルム

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二人はクラスで一番 情報収集が早く 職員室や校長室にでも軽く忍び込める。 「それでは皆さん、お見せしましょうー。」 みんなが画用紙を覗き込んだ。 翔一も同じく。 画用紙には、転入生の似顔絵が描かれていた。 一体、こんなものいつ描いたのだろうか。 そして どこで画用紙を手に入れたのだろうか。 「名前:木村京介 身長:160cm~170cmくらい 体型:少々痩せ気味 性格:特に悪いところは無さそう 見た目:格好悪くもないし、格好いいともいい難い。 まあ、現段階で調べられるのはそれくらいかな…。」 画用紙に描かれた似顔絵は 実物を見ていないから分からないが かなり上手い。 細かいところまでしっかりと描かれている。 二人が言い終わった途端 またお喋りがいたるところで始まった。 「な~んだ、カッコイイと思ってた。」 「何かいたって普通だな。」 とか、下手すると愚痴にも取れる言葉がほとんどだ。 翔一もお喋りに混じっていると チャイムが鳴ってしまった。 (結局、転入生の話しだけで終わっちゃったよ。) と翔一が考えながら ランドセルの中身を急いで 机の中に入れた。 朝の会になり みんかは席に着いた。 転入生の話題を聞き逃さないためか最初から静かだった。 やがて 例の雅弘先生が 翔一達のクラスに入ってきた。 いつもは教室に入り 教卓の前に立ち その日一日の話しをする。 ただ今日はどうなるか…。 みんなは先生が教室のドアを開けるところから まじまじと見つめ続けた。 ドアを閉め 黒板の前を歩き 教員手帳や学級日誌を 教卓の上に置いて、止まった。 (…教卓の前に立たない…!) 先生は教卓の横に立って、喋り始めた。 間違いなかった。 転入生の話しは本当である。 「えー今日は、実は、新しく転入生が、来ているのでみんなに紹介したいと思います。 おーい、入れ。」 教室のドアが静かに開いた。 少年が入ってきた。 翔一と背が同じくらい もしくはそれより少し高い。 顔はあの似顔絵とそっくりである。 その子は少し恥ずかしげに教卓の前に立った。 無理もない。 クラス全員が一人を 見つめることなんて滅多にあることではないのだから。 「それでは、黒板に名前を書いて、自己紹介を出来るね。」 先生の問い掛けに少しだけ頷くと 黒板に彼の名前を書き始めた。 「カッ、カッカッ カツ カツカツカッ」
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