†第0章† クロノエルム

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静かな教室に黒板とチョークが ぶつかる音だけが鳴り響く。 書いている本人にとっては 何とも嫌な時間だろう。 見ているこっちが緊張してくるくらいだ。 ここで、字を間違えたり チョークを落としたりするのだろうか。 緊張して字が震えないといいのだが…。 そんな翔一の心配をよそに 彼はすんなり名前を書きあげた。 みんなに見える様に 彼は少し横にずれた。 みんなは興味津々だ。 名前なんてもう知っているのにも関わらず。 「木村京介」 達筆とは言えないが 字のバランスは整っていた。 前を向いて 少し息を吸ってから話し始めた。 「えっと…。名前は木村京介です。 僕の父がゲーム会社の社員で急に転勤することになって、こっちに来ました…。 もうすぐで中学に入るって時に来て、迷惑かもしれませんが、よろしくお願いします。」 よくいる転勤族とは違うようだ。 自己紹介に馴れがないので 翔一はすぐに分かった。 他の何人かも気づいただろう。 みんなは、お辞儀をする京介にパチパチと拍手した。 「はい、京介君はこの学校のことが、よく知らないので、みんな親切に教えてくれよ。 早く仲良くなるようにな。」 (ふ~ん…。京介か…。) !? 翔一は京介という名前に奇妙な感覚を感じた。 妙な親しみというか これから長い間その名前を呼ぶのではないか。 そんな気がした。 (何だろう?この感覚?) 「よし、それじゃあ、翔一の席の隣が空いてるから、そこに座りなさい。」 (うっわ~、来たよ。 何で先生はいつも、空いてる席に転入生を座らせるかな…。 運悪くこの席に座った人が、どんなに気まずい思いするか知らないんだよな~。) 翔一は頭の中でそう思いながら 京介の顔を見つめた。 一瞬、京介と目があった。 するとまたあの感覚に襲われた。 今度はもっと強く。 別に仲良くなりたい訳じゃなかったが 何故か こいつとは仲良くなれるという確信が生まれた。 何故だろう? というか 何なんだろう? 京介も同じものを感じたかは分からない。 ただ京介は何事も無かったかのように 翔一の隣に座った。 (あ~あ、嫌だな~。 どうなるやら……。)
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