†第0章† クロノエルム

7/15
前へ
/31ページ
次へ
次の日 翔一の大好きな休日。 当然学校も休み。 そして 翔一はというと朝早くからゲーム屋にいた。 なんと今日は 翔一が前から目をつけていたゲームが 発売される日だったのだ。 それをいち早く手に入れるためにわざわざ早起きして 開店前に並ぼうという魂胆だ。 ゲーム屋は商店街の中にある。 翔一が行きつけのオススメの店である。 店長と仲がいいのもひとつの理由だが 商品の入荷が早いことが一番の理由だ。 ゲーム屋には、まだ2、3人しか来ていない。 それもそのはず 商店街には昼間でも人気が少ないのだ。 (ちょっと早過ぎたかなぁ…。) 翔一はそう思いながら 先に来ていた子達の後ろに並んで しばらく待っていた。 すると 店の奥から 一人の男の子が出てきた。 その子は両手に看板を抱えて 重そうに店の前に持ってきた。 看板には 「新作ゲーム入荷!!」 と書かれている。 まさに翔一が手に入れようとしているゲームである。 ふとその子の顔が こちらから見えた。 「あれ、君!もしかして?」 翔一は無意識のうちに声を掛けていた。 昨日転入してきた木村京介にどこか似ていたのだ。 「え?」 翔一が声を掛けたその子は 翔一の方を振り向いた。翔一の予想は的中した。 やはり木村京介だった。 「…あ!あ~、君確か隣の席の子だよね?」 京介は最初はビックリしていたが やがて誰だか分かると 明るい表情で答えてくれた。 「うん、そうそう。 …でもお前ここで何してんだ?」 翔一は怪訝そうな顔つきで聞いた。 「へへ、アルバイトがてらに父さんの手伝いしてるんだ。」 そういえば 京介は自己紹介で 自分の父親はゲーム屋の店員だと言っていたはずだ。 「父さんの手伝いって、お前の家…ここなのか?」 翔一は驚きが隠せない。 じゃあ ここの店長と家族は どこへ行ったのだろう。 「そうだよ、前の店長さんが転勤して、僕のお父さんがこの店を継ぐことになったんだ。」 「へー、そうなのか…。」 「あの…、ゲーム買いに来たんでしょ?よかったら家に上がってよ。」 京介は自分の家 つまりゲーム屋を指差す。 「マジで!いいのか? それじゃ、お言葉に甘えてお邪魔しまーす。」 京介は持ってきた看板を 少し調整してから 翔一を家の中に招いた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加