甘い恋の歌

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美姫は和歌オタクだ。 美姫の母親が かるた(百人一首)教室の 先生をしているらしく、 沢山の和歌を聞くうちに 美姫は、かるたよりも 歌の意味や時代背景に 興味を持ったそうだ。 大学でも文学部を選んだのは その為だという。 毎日嬉々として 図書館に通っている。 美姫は、典型的な 文学少女なのである。 で、それがどうして 土方の声にメロメロ~に 繋がるのか…。 「あの声で、和歌を詠みあげたら どんなに素敵なんだろう!」 土方に会った日の部活後。 武道場の前で 竹刀の手入れをしながら 美姫はトロンとした目で言った。 「それが理由なの!?」 春はまじまじと美姫を見る。 細い栗色の髪と 色素の薄い黄金色の瞳。 美姫は不思議なオーラを 持っている。 美人の部類に入るのに、 頭も良かったことと こんな風に変わり者な所があって 近寄りがたい神秘的な美女として 男子からは遠巻きに見られていた 「低くて甘くて、 掠れてるのに涼やかな声…。 あぁ~録音しとけば良かった。」 四つに分解した竹刀の一辺を やすっていたはずなのに 地面にとり落としてしまっている 「…。」 完璧に恋する乙女状態の美姫に 春は返す言葉もない。
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