甘い恋の歌

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一瞬、どちらも無言になる。 春はドキドキして 土方の返事を待った。 [いいぜ。] 土方が言った。 「本当ですか!?」 [あぁ。ただ、 とりあえず会うだけだ。 好きになれって言われても それは無理な話だからな] 「ありがとうございます~。」 春は本当にホッとする。 一気に肩の荷が降りた気分だ。 美姫に都合の良い日を聞いて 後日連絡すると告げる。 一通り話がすむと、 [おい。最後に総司に変われ] 土方は相変わらず ブスッとした声でそう言った。 「総司、副長が…。」 春は総司に電話を差し出す。 「えぇ?またですか? まったく、土方さんったら 私のこと大好きなんですね。」 電話を受け取りながら 総司はニコニコしている。 [誰が誰を大好きだって!?] 総司が電話を耳にあてると、 今のセリフが聞こえていたらしく 土方が不機嫌そうに怒鳴った。 「もー。分かってるく・せ・に♪」 [絡みづれぇ奴だな。お前は。 いいか。ひとこと言っとく。] 土方の声音が真面目になった。 「なんです?」 総司も少し、背筋を伸ばす。 […もう、オレは良い。] 「…。」 総司はその一語で、 土方が言いたいことを理解した。 [そのかわり…。 あいつを不幸にしたら そのときは…。わかるな?] 「…ええ。煮るなり焼くなり、 土方さんの好きにして下さい。」 話の内容が分からない春は 総司が土方に 受け身な発言をするのを 不思議な顔をして聞いていた。
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