甘い恋の歌

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体は大きいのに、いちいち 子供のような駄々をこねるので 子供よりタチが悪い病人である。 薬が効いてきて、 やっと寝ついてくれた時には 春はヘトヘトになっていた。 「来て良かったけどね。」 春は熱に火照った顔で スヤスヤと眠っている総司を見る。 こんな時に、総司を1人にせず 看病できたことが 素直に嬉しかった。 頬っぺたをりんごのように 赤くしている総司は 本当に子供みたいで可愛い。 春が寝顔を眺めていると、 総司の携帯のバイブが 枕元で鳴った。 (メールかな?? 総司が起きなきゃいいなー) と、春は思うが、 どうやら電話らしい。 バイブが一向に鳴りやまない。 「勝手には 出れないし、切れないし。」 春がオロオロしていると、 「…うーん。」 総司が起きてしまった。 モゾモゾと、携帯に手を伸ばす。 「はい、もしもし~。」 トロンとした声で、電話に出た。 途端に、携帯の向こうから 甲高い女の人らしき声が 春の耳にも届く。 相当大きな声だ。 総司も目を見開いている。 「あぁ。はい。 え?そうなんですか? いえ、私は遠慮しときます。」 なんで~!? と言う声が、春にも聞こえた。 「熱出ちゃって、 寝込んでるんですよ。 またの機会に…。」 総司は苦笑いだ。 「えぇ!?結構です。」 総司はどんどん 困った顔になっていく。 どうやら看病に来るなどと 言っているようだ。 春が少しムッとしていると、 「いや、ありがたいですけど… 今日は彼女が来てくれてるので」 総司がばっさりと断る。 (“彼女”///!!) 総司からそう呼ばれたのは 初めてで、春は1人赤面した。 (そうかー。幕末だったから 意識しなかったけど、 あたし総司の彼女なのかー。)
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