甘い恋の歌

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「やばー。遅刻しちゃう。」 待ち合わせ場所である 校門を目指して走っていると、 「春チャーン!!ちょっと待って!」 後ろから声がかかった。 (この声は…。) 立ち止まって振りかえる。 やはり、ありかだった。 「ハァッ、足、ハッ。早いね。 すぐ、ッ追いかけたのに なかなか追い付けなかったよ」 「何か用ですか?」 春は息ひとつ乱れていない。 「うん。ちょっとね。 時間とらせないから、 話聞いてくれる?」 ありかはニッと笑う。 可愛らしい八重歯が見えた。 「2、3分で良ければ…。」 「十分だよ!ありがと!」 春は訝しげな表情になる。 今日会ったばかりの春に 一体何の用事が あると言うのだろう。 「いやー。あのさ。 やっぱ顔知っちゃったら、 正々堂々行きたいから、さ。」 「??」 春は首を傾げる。 何の話しだ? ありかが春を見つめた。 「ごめん。私、好きなんだわ。 総司のこと。」 ザァッと、生ぬるい風が吹いた。 季節は梅雨。 今にも雨粒が落ちてきそうである 春はぱちくりと瞬きした。 「えっと…。」 一応口を開こうとしてみる。 「あー!春チャンが 憎いとかじゃないの! 彼女出来たって聞いても あきらめらんなくて…。 私は私で頑張らせてもらうから、 ごめんねってこと!」 春は何も言えない。 「総司ってどの女の子にも 優しいけど壁があって…。 だから1年以上何も言えなくて、 ずっと片思いしてたんだー。」 ありかは切なそうに眉を寄せた。
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