言葉はいらない

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その日の夕方。 総司の部屋に、優達3人と 土方、美姫、総司は集まった。 「春の記憶が 幕末に逃げてるぅ?」 優が大きな声を出す。 都はこぼれそうなくらいに 目を見開いた。 冬馬は首をひねっている。 「あくまで推測ですが。」 総司はこっくり頷くと 例の写真を取り出した。 「春と沖田先輩じゃん。 これがどうかしたんですか?」 優が顔をしかめた。 「二人の服装と 沖田先輩の髪型をよく見て。」 美姫が静かに促す。 「……着、物?? 沖田先輩の髪も長い……。」 都が写真を掴んだ。 「本当だ。 え?これって?」 冬馬は写真から 目が逸らせなくなっていた。 「幕末での私達です。 以前の写真では 春の髪が短かったんです。」 総司が答えた。 「どういうことだよぉ?」 冬馬が不安そうな声を出す。 黙って話を聞いていた 土方が顔を上げた。 「冬馬、お前達が 天野とかいうクソ野郎の部屋に 春を助けに行ったとき、 既に春一人でカタは ついてたって言ったよな?」 「あ……、はい。」 都が返事をした。 「そのときの春の様子は?」 「女の子に……」 拳を振り上げていたとは言えずに 都は口をつぐむ。 それだけ聞けば十分だ、と 土方はひとつ頷いた。 「極限まで追い詰められた春は ただ目の前の敵を 倒すことしか考えられなかった。 幕末での命をかけた経験が 春をそうさせちまった。 そうすると、どうなる?」 「どうなるって言われても。」 優は難しい顔をした。 総司が重たい口を開く。 「自分は所詮人斬りなんだ……と 自分で自分が恐ろしくなる。」 部屋がシンと静まり返る。
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