言葉はいらない

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「おいおい。マジかよ。」 土方は髪をかきあげて 総司が握る写真を見つめた。 (もし本当に幕末に行けるなら 俺も……行くべきか?) 土方が写真を掴もうとすると 優と冬馬の手が同時に伸びてきた 「私達が行きます。 都が心配だから。」 優は土方を見て 小さく頷いてみせた。 「土方さんと美姫は 俺らの体とこの部屋を 見張っててくれよ。 皆して眠りこけるわけにも いかねーだろ?」 珍しくもっともな意見を 言えたと思ったのか、 冬馬は得意げに 親指を立ててみせる。 「そん……。」 戸惑う土方よりも先に 美姫が2人を強く後押しした。 「わっ、分かった!! こっちのことはまかせて!」 優と冬馬はにっこり微笑むと すうっと体を倒した。 2人とも、もう意識はない。 土方と美姫はしばらく 身を寄せあって 光りを帯びる写真を見つめた。 光は少しずつ弱まっていく。 「頼んだぞ。総司。」 土方が呟いた。 美姫は祈るように、 自分の手と手を 握り合わせていた。
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