言葉はいらない

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「うーん……。」 陽射しが眩しい。 閉じた瞼の裏にまで光が届く。 「目が覚めたか?」 総司の頭の上で男の声がした。 この落ち着いた喋り方。 誰かに似てますねぇ。 誰でしたっけ? 総司は頭の片隅で、 そんなことを思った。 「他の3人は とっくに目が覚めてるぞ。 沖田さんは相変わらず のんびり屋なんだな。」 笑いを押し殺したように 男が話しかけてくる。 3……人って……。 「……うはぁ!!?」 総司は振り子のように ガバリッと身を起こした。 自分がどんな状況だったのか すべて思い出したのだ。 「ここは!? 3人って何ですか!!? 朝倉さんと私以外にも…… って……さい、とう、さん??」 総司の言葉は 途切れ途切れになっていく。 総司の傍で穏やかに 微笑んでいたのは、 幕末という動乱の世を 新撰組の幹部として 共に駆け抜けた同志だった。 「そうだよ。 新撰組三番隊組長、斎藤一だ。 ここは間違いなく 沖田さん達が暮らしている “へいせい”の世ではない。」 斎藤は淡々と答えた。
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