春色平成児誉美

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「ふぅ~。」 暖かくなってきたと言っても 日が沈めば冷たい風が吹く。 春は手に息を吹きかけて 暖めながら歩いた。 パサッと肩に パーカーがかけられる。 「春っていっつも薄着ですよね。 風邪ひいちゃいますよ。」 隣を歩く総司が 自分が着ていたものを一枚脱いで 春に被せてくれたのだ。 「総司が風邪ひいちゃいますよ」 春が慌てて総司に 上着を返そうとすると その手をそっと制された。 「急いで家を 出てきてくれたんでしょう? 私なら大丈夫ですから 羽織ってて下さい。」 春の足元を見て、 総司はくすくす笑う。 「う……。」 春の頬はサッと朱に染まった。 裸足にサンダルという いかにも慌てて家から 飛び出してきた スタイルだったからだ。 母がゴミ捨てに行ったり、 近くのコンビニに行くときに 適当につっかけていく ボロい健康サンダルだ。 激しく格好悪い。 記憶が戻った瞬間に 春は総司のマンションに 向かったのだった。 家族が心配して待っているので 今日はひとまず 実家に帰ることにする。 夜も遅くなったので こうして総司が家まで 送ってくれているという訳だ。
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