春色平成児誉美

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「春。」 総司がニコニコと春を呼ぶ。 「はい?」 春はまだ赤い顔を 総司の方に向けた。 「春。」 「はい、なんですか?」 春は首を傾げる。 「春!!」 総司は声を大きくして 更に春を呼び続けた。 「何ですか!?」 「しゅーんっ。」 「なんなんですよぉ。」 終いには春も吹き出した。 「呼んでみただけです。 返事が返ってくるのが とっても嬉しくって……」 総司は足取り軽く 月のない空を見上げる。 「総司……。」 自分がこの人のことを 一瞬でも記憶から 追い出そうとした事実が 春の胸に突き刺さる。 「わぁ!! そんな落ち込まないで下さいよ。 春を責めてるわけじゃ ないんですからね!!」 一気にしょげ返った春を見て、 総司は困った顔で笑う。 「責めて良いです! むしろ怒って下さい。 責め立てて下さいよ。 最低です、あたし。 総司には忘れないで下さいって 言ったことあるくせに……。」 「…………。」 総司は何も答えない。 「総司?」 「春って……M??」 言われた意味が 瞬時に分からなくて 春は一瞬固まった。 「なななななななな!! 何でそうなるんですか!! こっちは真面目にですねぇ!」 「あはは。すみません。」 総司はへらへら笑う。
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