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「大丈夫ですか?
歩き方が変ですよ。」
総司に続いて路地から出た春に
総司はわざとらしく聞いた。
「誰のせいですか、誰の。」
潤んだままの瞳で
春は総司をじとっと睨む。
5分以上キスを続けられて
体に上手く力を
入れることができないのだ。
いつもは桜色の春の頬は
よく熟れた林檎のように
火照って真っ赤だった。
(私のせいって……
そりゃそうなんですけど
分かって言ってんのかなぁ、
この子…………。)
総司は春の横顔を眺めて
ニヤニヤと笑う。
「なんですか?」
春はジト目のままで
総司を見上げた。
「別に~。」
「うわ、何ですかそれ!
絶対別になんて思ってない!」
「えぇ、思ってないですよー。」
からかい口調の総司に
春が必死で抵抗している内に
家の前まで着いた。
「春!」
物音を聞き付けたらしく
春の母が玄関に飛び出してくる。
「お母さん……。」
春が驚いている横で
総司はぺこっと会釈をした。
「何も言わずに出てくから
心配したでしょう!?
携帯も持っていってないし!」
「ご、ごめんなさい。」
春が母に謝っていると
「戻ったのか…………。」
春の父が玄関に顔を覗かせる。
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