春色平成児誉美

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「お前ら、原田、永倉、藤堂の 3人に会ったんだろ?」 「会ったっていうか…… 話してるのを聞きました。」 都が記憶を探るように 瞳を上に向けて答えた。 土方はひとつ頷くと 自分の考えを簡単に述べてゆく。 「そのとき姿を 見られてたのかもしれねぇよ。 そこで過去と未来の関わりが できたんじゃねぇのか?」 「あ!それなら……」 都と冬馬よりも先に 春がぽんっと手を打った。 なぜこの3人だけが 前世に気づいて春に出会ったのか 春はずっと疑問に思っていた。 未来から来た春と関わった為に 生まれ変わったという理屈なら 春に関わった人達…… 局長や、斎藤さん、 果ては長州の志士達まで 生まれ変わってしまうことになる 「それだと私達が 生まれ変わってる時点で 春は記憶を失うことが 決まってたってことですか!?」 しばらく考えていた都が 目を大きく見開いた。 「それどころか、 お前らが幕末に行かなかったら お前らは生まれてすらないし 存在すらしてない。 イコール、未来で存在してたから 生まれ変わってる。」 土方は節がついた 歌のように言った。 「俺、頭痛くなってきた……。 ターミネーターの設定みたい…」 冬馬は顔をしかめて 軽く頭を叩いている。 春も同様に、途中から 脳ミソがパンクしそうになった。 「む、無限ループ!」 頭を抱えて唸る春の傍で 総司は冷静に考える。 (さしずめ斎藤さんが 私と土方さんみたいにそのままで 生まれ変わらなかったのは 春自身が未来の人間だと 知られていることを 知らなかったからかな?) それは総司の胸の内に 秘めておきつつ 総司はひとり、小さく笑った。 春の父親が斎藤の 生まれ変わりであること……。 それは、自分と春が 出会うことが決まっていた証だ。
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