春色平成児誉美

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「私だけ仲間はずれみたいで なんか寂しいよぅ、土方さん!」 美姫がわざとらしく 瞳をうるませて 土方の腕に絡みついた。 「俺がいるだろ。」 土方は即答する。 「は?」 これには美姫自身も驚いたようだ 体を離して、疑り深い目で 土方の顔をまじまじと見ている。 春と総司は途端に 顔をニヤニヤと歪めて 顔を見合わせる。 「俺も愛し合える人が欲しい。」 冬馬が真顔で呟いた。 「なっ!ばっ! 俺は別にそんな意味で 言ったんじゃねぇ!」 「そんな意味って どんな意味ですか?」 美姫がぷぅっと頬を膨らませる。 「っ!! ……風に当たってくる。」 土方は逃げた。 そそくさと立ち上がって 総司の部屋から出ていく。 「私も風に当たろっと。」 ちっともめげない美姫は 陽気な足取りで 土方の後について行った。 「橘さんは、この平成の世で 土方さんと出会う 運命だったんでしょう。 春と幼馴染みだった時点でね。」 静かになった部屋で 総司がグラスに氷を 入れながら言う。 「まぁね。今生きてる人の全てが 誰かの生まれ変わりっつーのは 人口的に考えても無理だもんな」 冬馬が総司に コーラとジンを差し出した。 総司は、美味しいんですか?と 呟きつつも、冬馬おすすめの 割り方でお酒を飲むようだ。 「土方さん…… ちょっと酔ってたのかな?」 春はにこにこと笑う。 「あの人、昔っから お酒そんなに強くないですから」 何かを思い出したように 総司もくすくすと笑った。
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