春色平成児誉美

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「……で、何で私達は京都に いるんでしょうねぇ?」 総司は両手を 双眼鏡のように丸めて 京都駅の展望台から 京都タワーを見上げている。 春の風に舞い上がる 色素の薄い総司の髪の毛には 珍しく寝癖がついており 右側に大きく跳ねていた。 「こっちが聞きたいです。」 春は長い髪をうざったそうに 片手で押さえる。 結局総司と春は、財布だけ持って 新幹線に飛び乗ったのだった。 本当に時間とお金と 気持ちさえあれば来れてしまう。 春は、今自分が京都という土地に 立っているいうことを 実感できずにいた。 近所に散歩に行こうか、 という気分でここまで 来たのだから信じられない。 総司は大きく伸びをすると 心底楽しそうに笑った。 「ははっ!冗談ですよぅ! 私は前から計画してたんです。」 「本当ですか?そのわりには、 新幹線乗った途端に 眠りに落ちてましたよね?」 春は総司の寝癖を指さした。 新幹線の自由席に 腰を落ち着けるとほぼ同時に 総司はシートを倒しもせず しっかり目を閉じたのだ。 そのせいで、ばっちり 変な寝癖がついている。
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