春色平成児誉美

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「あ~!そこです、そこ! って、痛たたたたたっ! 春、もう少し優しくして下さい」 日もすっかり沈んだ頃。 総司のうめき声が 安ホテルの狭い室内に響いていた 「え?そんなに力 入れてないんですけど……。」 春はうつ伏せに寝ている 総司の太ももを 親指でぐりぐり押す。 「痛たたたたっ!」 「おかしいなぁ?」 再びぐりぐり。 「ちょ、もっもう良いです!」 総司は苦悶の表情を 浮かべて起き上がる。 夕方まで歩き回り、疲れ果てた頃 慌ててホテルを探したのだが、 空き部屋がなかなか見つからず 今の今まで歩き回っていた。 普段運動しているとは言え、 さすがに足が疲れた総司は 春にマッサージを頼んだのだが… 「そんなに痛いんですか?」 春は不思議そうに 自分の手を見つめ、 閉じたり開いたりしている。 「春、握力どれ位あります?」 痛みによる脂汗を拭いながら 総司はおそるおそる春に訊いた。 「40弱ですかね。」 春はけろりと答えた。 うっかりすると男子並みだ。 総司はこれからは 春にマッサージを頼むのは やめておこうと強く思った。
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