家庭訪問

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「お父さん反対するかなぁー」 春は竹刀の手入れをしながら やっと落ち着いた母に聞いた。 「別に大丈夫じゃないの? お父さんは無口だけど 別に意地悪な訳じゃないから。」 母は夕食の準備をしながら しれっと答える。 (その無口が恐いんだよぅ…) 春は竹刀のささくれを やすりで削りながら 普段の父を想像する。 春の父は警察官だ。 よくある話だが 剣道もまだまだ現役で めちゃくちゃ強い。 春が剣道を始めたのも父の影響だ そんな父像を、春は総司に 『厳格な人』と伝えたが 母も言ったように とにかく無口なのである。 あまり会話の キャッチボールが成り立たない。 「うん。」 「あぁ。」 「そうか。」 「すごいな。」 くらいが、 父の発する主な単語である。 声をあげて笑った所は 見たことがない。 彼の大笑いは、 口元を少し歪めニヤリとし 「フッ」と言うだけだ。 春は今でも 父が何を考えているか 計り知れない。 だから、男の子と付き合ってる と告げてどんな反応をされるか または、その相手に どんな対応をするか不安なのだ。
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