春色平成児誉美

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闇の中にぼんやりと 春の愛しい人の顔が浮かび上がる 総司の大きな瞳は 切なげに細められていた。 最高に甘ったるい空気が 春と総司を包んでいる。 「……こういうことって やっぱり凄い激しい スポーツみたいなんですか?」 気恥ずかしくなった春は 心に浮かんだ疑問を そのまま口に出した。 普段なら、その質問が とても恥ずかしいことに 気がつくはずなのだが 今の春にそんな余裕はない。 総司の腕からガクッと力が抜ける 「そっ、総司?」 「誰ですか!?そんなこと 春に吹き込んだのは!!」 「美姫で「土方さんのバカー!けだものー!」 春が説明する前に 総司が哀しげにうめく。 一気に普段通りの 会話のテンポになってしまった。 だがそのことにより ガチガチに緊張して 凝り固まっていた2人の心は 嘘のようにほぐれていく。 「あ、あの……。」 オロオロと総司を見上げる春。 総司はひとつ息をつくと 何の前触れもなく春にキスをした 触れるだけの軽いキスだ。 総司の熱はすぐに 春の唇から離れていく。 「まぁ…………、 本当にそんなに激しいのか やってみないことには 分からないですよね?」 総司はにっこりと笑った。 「な!?」 顔を真っ赤にして慌てる春の口を 総司はまた塞ぐ。 今度はさっきよりも わずかに深く。 キスが目的ではない。 キスで完結しないキス。 “その先”の為のキス。
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