春色平成児誉美

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「原子って何か分かってます?」 総司は春の首筋に顎を乗せる。 「??」 案の定、春は首をひねった。 「中学校とか高校で 習いませんでしたか?」 「習ったのかもしれないし 習ってないかもしれない……。」 春は自信なさげに返事をする。 「しょうがないですねぇ。 原子っていうのは、簡単に言えば 物質の一番小さなカケラです。 それ以上分割できない 最小の粒のことなんですよ。 厳密にはちょっと違いますけど」 「厳密には言わなくて良いです」 既に頭が痛くなりかけた春が うめきに近い声で先を促した。 「まぁとにかく、 地球上、更には宇宙上に 存在するモノすべては、 その小さな粒が沢山集まって できてるんです。 もちろん私達の体もね。」 総司は得意気に語る。 「はぁ……。」 ミクロすぎて壮大な話をする 総司の意図が分からなくて 春は曖昧に頷いた。 「だからつまり、 私っていう個体が消えても 私だったカケラ自体は 絶対に無くならないんですよ。 それこそ永遠に。」 「あぁ、だから 風になってるんですね!」 春がぽんっと手を打つ。 総司はケラケラと笑った。 「まぁ、そういう感じです。」
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